最高裁判所第二小法廷 昭和41年(オ)333号 判決 1966年9月30日
上告人
佐藤直義
右訴訟代理人
住友尚平
被上告人
川南養豚生産組合
右代表者
遠矢景蔵
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人住友尚平の上告理由第一点について。
所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠により肯認できるから、原判決には所論の違法はなく、論旨は理由がない。
同第二点について。
原審の確定した事実によれば、被上告組合は組合員の相互扶助の精神を基調として、親ぼく融和を計りつつ事業を行ない、組合員の経済的地位の向上をはかることを目的としてつくられたもので、被上告組合がその組合員に売渡した飼料について組合員から受取るべき代金額は、被上告組合が買つたときの代金額に右売渡日以降組合員から支払いをうけるまで日歩四銭の利息を付加したものにすぎない(原判決八枚目表九、一〇行目に「一定の手数料、手数料と同視すべき程度の利潤、一定の利息」とあるが、飼料に関する限り右記載のとおり日歩四銭の利息の付加された額が支払われるにすぎないことは、同五枚目表一行目ないし六行目、同七枚目表一三行目から同裏一三行目の終りまでに記載してあるところから明らかである。)。そうすれば、被上告組合がなした本件飼料の売買行為は、民法一七三条一号にいわゆる売却にはあたらないと解するのが相当である。従つて、原審が同条を適用しなかつたのは結局において正当で、その他の点について判断するまでもなく、この所論も理由がなく、採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)